静かな食卓

なぜ人はカニを前にすると静かになるのだろう。
内陸国オーストリアに住む我が家の食卓に、初めてタラバガニが登場した。
何だか盆と正月が一緒に来たようなワクワク感。

いつもは何だかんだと騒がしい兄弟だが、この集中力はどこから来るのか。
「ねえねえ、あと何本あるの？」
自分で数えればいいのに、あえて人の口から言わせたいのか、カズ！

「見れゃ分かんだろ、ボケっ」
カズを相手にしないタク。

それにしてもでかいなあ、アラスカ産のタラバガニ。
でも、何でアラスカなのかなあ。北海の方が近いのに。
「ユカも食べてるかなあ、カニ」
日本の女房の実家で暮らす長女に思いをはせる。
「だいじょうぶ。もっとおいしいもの食べてるから、あの人」と女房。
そういえば、よくクルクル寿司に連れてってもらってるって言ってたなあ。
でも、ユカの欠けた鍋は、ちょっと寂しい。
夜中、ウィーンを発つ直前のユカの写真に見入る。

この春から大学生。寮生活だから寂しくないよね。がんばれ。ＢＹニック
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