ロイをひっくり返してブラッシングしていた母ちゃんが驚きの声を挙げた。
「この赤い袋って何?」
どれどれ…。厚い体毛をかき分けると、そこにはピンク色のいなり寿司、もとい陰嚢が…。
そのコブクロをグリャリとつまんだ母ちゃんがまたまた叫んだ。
「タマタマがあるっ!」
陰嚢にタマが2個あるのは当たり前だが、ロイの場合は違った。
生後2カ月で我が家にやってきて以来、片方の睾丸が無かった。
正確には、体内に隠れていた片方の睾丸が外へ降りて来なかった。
実は、ロイにはタマが1個しか無かったから、我が家に迎えることができた。
ドイツ・ハンブルグのブリーダーさんの家で生まれたロイは、生後間もなく、繁殖用に別のブリーダーさんに引き取られることになっていた。
ところが、しばらく経ってもタマが1個しかない。いわゆる「停留睾丸」だった。
これが原因でロイの身請け話はご破算となり、兄弟で最初に引き取り手が見つかったのに、結局は最後までブリーダーさんの家に留まることになってしまった。
でも、我が家にとってはこれが幸いした。
だって、プロのブリーダーさんが繁殖用に欲しがるような確かなわんこに幸運にも出会うことができたのだから。
しかも、心配していた片方のタマもしっかり降りてきた。
停留睾丸は歳をとってから腫瘍に変わる恐れがあっただけに、これで一安心。
だが、タマが降りてきた途端、新たな問題が…。
去勢すべきか否か。
停留睾丸が続けば「去勢手術も致し方なし」となるところだったが、降りてきたとなると「せっかく出てきたものを取ってしまうのもなんだし…」と考えてしまう。
ロイもはや生後半年。今夜もまた、ロイのタマタマの将来を巡って家族会議の紛糾は間違いなし。
BYニック